私は時々お伝えしているように、「キットパス」というクレヨンを使ったアートワークショップを開催しています。
窓ガラスにも描けて、水で消せる魔法のような画材。
その親しみやすさもあってか、私のワークショップには小さなお子さんがたくさん参加してくれます。

元々ワークショップのキットは何色を使ってもいいのですが、私のワークショップでは少し工夫を加え、ひとつの小さなしきたりがあります。
それは、「最初の2工程だけはみんな一緒。その先は、全員好きなように進めていい」という構成です。
共通の土台があるからこそ、その先に広がる「個性の爆発」に、私はいつもハッとさせられるのです。
目次
ゼリーが「車」に、ズレが「喜び」に変わる瞬間
今年から始めた「FUN!STAMP・フルーツゼリースタンプ」のワークショップでのことでした。
工程はシンプルです。
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ピンク色のゼリーをスタンプする
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水色のお皿をスタンプする
ここまでは全員同じ。その後に、カットしたフルーツや丸いスタンプで自由に盛り付けてもらいます。
ある子は、パーツをジッと眺めたあとゼリーの下に押すお皿を「逆さま」に押し、それを「車」に見立てたのです。さらにパイナップルのスタンプを「腕」に見立て、最後には「動くロボット」を作り上げてしまいました。

また、別のお子さんは、最初にゼリーをスタンプする位置が少し斜めにズレてしまいました。 「あ、紙を取り替えてあげないといけないかな?」としばらく様子を見ていました。(中にはもういやだ!とあきらめてしまう場合もあるのでその時は最初から作り直します)
でも、その子はじっと紙に押されたゼリーを見つめた後、おもむろにお皿を押し始めました。
そして、最後には弾けるような笑顔で私にこう教えてくれたのです。 「ねえねえ見て!楽しくて(ゼリーが)飛び出しちゃったんだよ!」

こうやって、いつもいつも、こどもたちは私に驚きを与えてくれます。
おとなが忘れたアート思考の本質
このエピソードには、いまビジネスや教育の現場で注目されている「アート思考(Art Thinking)」の本質が詰まっています。
一般的に「デザイン思考」が「他者の抱える問題を解決する」ための思考法であるのに対し、「アート思考」とは「自分なりの視点で世界を捉え、自分だけの答え(問い)を創り出す」プロセスを指します。
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正解を求めない: 「ゼリーはお皿の真ん中にあるべき」「お皿はこの位置」という常識を捨てる。
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違和感を価値に変える: 「ズレ」という予期せぬ事態を、独自のストーリー(楽しすぎて飛び出した)で肯定する。
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起点は自分: 他人がどう思うかではなく、自分がどう感じ、どう見立てるかを最優先する。
大人が「失敗」と呼ぶ境界線を、子供たちは軽やかに飛び越えて「新しい表現」に変えてしまう。
これこそが、私たちが大人になる過程で置き忘れてきた最強のクリエイティビティなのです。
なぜ大人は「絵心がない」と自分を責めるのか
一方で、時々お子さんと一緒に参加されるお父さんやお母さんからは、こんな言葉が漏れることがあります。
「私、絵心がないので……」 「あ、失敗しちゃった。私、下手だなあ」

なぜ、私たちはいつの間にか、自分をネガティブな言葉で縛ってしまうのでしょうか。
生まれたての赤ちゃんの頃は、少し笑うだけで褒められ、ハイハイができれば「すごい!」と手放しで喜んでもらえたはずです。
そこには「成績」も「正解」もありませんでした。
ところが、成長し、集団生活の中では「できないこと」に目を向けられることが多くなり、叱責される経験を重ねるうちに、私たちはいつの間にか「正解という枠からはみ出す恐怖」を植え付けられてしまったのかもしれません。
「上手」という言葉を使わない、私のこだわり
だからこそ、私はワークショップで「上手」「うまい」という言葉を一切使わないことを徹底しています。
なぜなら、「上手」の対極には必ず「下手」が存在するからです。その言葉を使った瞬間、無意識に「上手いか下手かという評価基準」を持ち込んでしまうことになります。
褒める時は、もっと具体的に。
「あなたのこの色の選び方が好きです」 「ここにこれを置くという発見をしたところが、とても素敵ですね」

評価ではなく、その人が見つけた「こだわり」や「発見」というプロセスそのものを、私の素直な感動として伝えるようにしています。
大人にこそ、夢中になる時間を
私はいつも思うのです。このワークショップは、日々「正解」や「効率」を求められ、褒められ慣れていない大人の方にこそ受けてほしい、と。
こどもたちの事例にみられるような「失敗」を「楽しすぎて飛び出した証拠」だと解釈し直す力は、単なるお絵描きの技術ではありません。
それは、予測不能なトラブルが起きたときや、先行きの見えない状況に立たされたとき、「だったらこう楽しもう」と状況を再定義できる回復力にも繋がります。
何もかも忘れて夢中になり、凝り固まった「正解のフィルター」を外してみる。 すると、今まで「間違い」だと思っていた自分の欠点やミスが、唯一無二の「個性」として輝き始めるはずです。
アート思考を体験することで、お互いの「違い」を「美しさ」として認め合える。そんな瞬間を、ぜひ共有してほしいと願っています。
皆さんもぜひ、自分の会社やチームでアートワークショップをやってみませんか? それぞれの個性が最も美しく見える瞬間が、きっと待っています。
神戸エコールでは文房具だけでなく、様々なアイテムを取り揃えております。
キットパスワークショップ、ウィンドウアート、各種ワークショップもお承りしております。
こんなのあったらいいな、こういうのが欲しいのだけど、というご相談があればいつでもお問合せくださいね!
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